曹孟徳大変身 2
――・・・ハァ・・・――
曹操は朝方、いつもと同じ時間に目が覚めたが、ため息とともに眠気が一気に覚める。
身体が元に戻ってないのだ。
願わくば、元に戻って欲しかったが・・・そんな気配は一向になさそうであった。
「まったく・・・どうしたらいいものか・・・」
考えれば考えるほど、頭が混乱し、冷静な判断ができずにいる。
「殿、お目覚めですか?お着替えの支度が整いましたが・・・」
ドアの向こうから女の声が聞こえる。
毎日曹操の身の回りの世話をする召使である。
曹操は入れ。と一言いうと、自分は寝台の毛布にくるまった。
余裕のある大きな寝台は豪華なつくりの上、天井がついている。
そこから薄いベールやらが寝台のすそまでたれている。
三人の入ってきた召使は曹操の身体の異変に気づかないまま、部屋に入り、着替えを抱えたまま挨拶をする。
「すまぬが、着替えは自分でするゆえ、そこにおいておいてくれ」
召使は曹操にそういわれ、不思議におもったが、着替えを台の上に置くと部屋から出ていった。
曹操はそれを確認すると、着替え始めた。
「・・・こんなことになろうとは・・・」
部屋の一角にある大きな鏡の前で変わってしまった自分の身体を眺めながら、曹操はつぶやいた。
「なかなか、面白いことになっているご様子ですね・・・殿」
ドアのほうから突然声が聞こえた。
突然の訪問に曹操は思わず、服で前を隠してしまったほどだ。
「・・・勝手に部屋に入るとは・・・いい度胸だな、司馬懿よ」
「折角、私がいい知恵を授けに参りましたのに・・・ヒドイいわれ様ですね」
反省の色なし・・・相変わらずである。
司馬懿は曹操に詰め寄ると、突然曹操の肩につかみかかった。
曹操は驚き、振りほどこうと、もがく。
「何をするっ!」
「殿、抵抗はおやめください」
「や、やめぬか〜」
ジャリジャリ・・・
数分後―。
「殿、いかがですか?」
曹操はそういわれ、鏡を恐る恐るのぞく。
司馬懿の手には高性能な剃刀?がにぎられていた。
「うおっ!わしの・・・ひげが〜。トレードマークのひげがないっ!!」
「殿、早速ですが、これを着ていただきましょう」
司馬懿は何処からか取り出した服―青いシルクのチャイナ服が・・・あった。
「・・・これをわしに着ろと?」
「ハイ」
司馬懿は平然と返事をする。
忌々しい男だ。と曹操は殴ってやろうかと思ったが、おとなげない。
気を鎮め、そのわけを問いただした。
「殿、今日から女性として過ごしていただきます。そのためには政治には他の者を立てるのがよろしいかと存じます」
そういいつつも、彼は曹操にチャイナ服を強引に進める。
この服は奴の好みか?などと曹操は考えながら、仕方なく曹操はとりあえず袖をとおした。
「・・・ピッタリだな・・・」
あまりにもフィットするその服に曹操は嫌な予感を感じつつも、なかなかの着心地にすっかりひげのことなど忘れていた。
「当然です。殿のサイズなど、この私にかかれば容易いことです。さすが・・・お美しい・・・・」
司馬懿は想像以上に似合っている曹操に思わず、めまいを感じた。
そこへ、曹仁と曹洪、夏侯惇が部屋に入ってきた。
三人ははいるなり、その曹操の変わりように思わず、みとれてしまった。
夏侯惇は鼻血を噴出し、その場に倒れた。
「・・・夏侯惇殿には刺激が強すぎましたかな?」
司馬懿は夏侯惇を小ばかにするようにいった。
「大丈夫か、元譲?」
夏侯惇はティッシュで鼻を押さえつつ、曹操に手を貸してもらって起き上がった。
が・・・。
ちょうど、目線が太もも――きわどくきれたスリットに。
やはり男であるが故に・・・当然、胸にも視線がうつる。
ふたたび、夏侯惇はその場に血まみれになりつつ、倒れた。
哀れ、夏侯惇・・・合掌――。
つづく